「ふてほど」が新語・流行語大賞に選ばれた違和感について考える
高齢な選考委員と世間とのズレが浮き彫りに
2024年のユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞に輝いた「ふてほど」(TBSドラマ『不適切にもほどがある!』由来)。ですが、SNSでは「聞いたことがない」「あまり流行っていない」といった声が多数挙がっています。
また、Googleトレンドを見ても、他の候補語「地面師たち」や「猫ミーム」と比較しても「ふてほど」の検索関心度は「1未満」とかなり低い結果。果たして、この選出は本当に妥当だったのでしょうか?
そもそも新語・流行語大賞とは?
この賞は、自由国民社がその年に登場した新語や流行語の中から注目すべき言葉を選び、その言葉に関わる人や団体を顕彰するもの。1984年に始まり、2004年からは「ユーキャン新語・流行語大賞」として親しまれています。
選考は、自由国民社が刊行する『現代用語の基礎知識』の読者アンケートをもとに編集部が候補語をノミネートし、その中から選考委員会が最終決定します。
選考委員の高齢化がもたらす世間との乖離
新語・流行語大賞は『現代用語の基礎知識』の読者アンケートを基に、選考委員7名が最終的に決定します。しかし、その選考委員の平均年齢はなんと61.2歳。メンバーは次の通りです:
- 金田一秀穂(杏林大学教授):71歳
- 辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト):50歳
- パトリック・ハーラン(お笑い芸人):54歳
- 室井滋(女優・エッセイスト):66歳
- やくみつる(漫画家):65歳
- 大塚陽子(『現代用語の基礎知識』編集長):年齢不詳
現代のトレンドを牽引するのは、SNSやストリーミングサービスを使いこなし活発な10代~40代です。しかし、このような若年層の感覚を持たない高齢メンバーが、世間のリアルな流行をどれだけ正確に反映できるでしょうか?
視聴率7.4%でも受賞する「ふてほど」の違和感
「ふてほど」はTBSのドラマ『不適切にもほどがある!』から生まれた言葉ですが、若者の間では「テレビをそもそも見ない」という現実があります。
今やNetflixやAmazonプライムが主流であり、テレビドラマの影響力は限定的。
しかも、このドラマの平均視聴率は7.4%と、流行語大賞を取るにふさわしい”流行語”とは到底言い難い数字です。
さらに流行語大賞の授賞式で主演の阿部サダヲさんが「正直、“ふてほど”って自分たちで言った事は一度もないんですけど(笑)*」と発言したことからも、
流行というよりも選考委員側のゴリ押しを感じざるを得ません。
*「ふてほど」流行語大賞!阿部サダヲが驚き「“ふてほど”って自分たちで言った事は一度もない(笑い)」
この問題は高齢化を象徴する事象
この状況を象徴するのが、選考委員と現実のズレです。例えば、SNSやGoogleトレンドを見れば、「地面師たち」や「猫ミーム」などのワードがはるかに話題性が高かったのは一目瞭然。
しかし、選考委員の多くがSNSを積極的に活用しているとは考えにくく、若者が普段触れている文化やトレンドを把握していない可能性があります。
高齢化社会の日本では、あらゆる分野で「上層部の高齢化」が問題視されていますが、この大賞もその例外ではありません。
平均年齢61.2歳の視点で語られる「流行」が、
現実の流行からズレてしまうのは当然といえるでしょう。
新語・流行語大賞への批判は過去にもあった
なんのための流行語大賞?
本来、流行語大賞はその年を象徴する言葉を通して社会の空気感を伝えるもの。
しかし、世間と乖離した選出はその意義を失わせる可能性があります。
この状況を改善するためにも、選考委員に10代~40代のトレンドセッターや文化評論家を加えた方が良いと思います。
また、Googleトレンドや検索ワード数などの客観的なデータに基づいて評価する必要があるでしょう。
一部では「ドラマの宣伝のために裏金や忖度が動いているのではないか」という疑惑も湧きあがっているため、選考理由や基準を公開することで、選考プロセスの透明化も必要でしょう。
「流行語大賞」そのものが過去の遺物になる日も来る?
「ふてほど」の受賞は、流行語大賞の時代遅れ感を象徴する出来事でした。
流行を選ぶ側が流行を理解していない状況では、誰も納得しない「名前だけの賞」になりかねません。
社会の変化に対応し、若者の感覚や現実のトレンドを反映した選考プロセスへの改革が必要です。
さもなければ、流行語大賞そのものが「過去の遺物」として扱われる日が来るかもしれません。