銅板が盗まれた”鬼滅の刃の聖地”へ行って分かった事—相次ぐ神社の銅板盗難
”鬼滅の刃の聖地”名草厳島神社の銅板盗難事件
10月上旬、栃木県足利市の山あいに鎮座する名草厳島神社で屋根に使用されている銅板約1630枚(時価約65万円相当)の盗難事件が起こった。
その事件現場に向かってみた。
駐車場に車を停め、舗装された林道を登り「厳島神社」と書かれた立派な鳥居をくぐる。

ここは「関東ふれあいの道」のコースにもなっているようだ。

5分ほど登って行くと舗装が途切れ、砂利道に変わる。

さらに5分ほど登って行くと、ようやく境内に到着する。左右は山の斜面になっており、人家などは勿論無い。ひと気の少ない静かな場所に見える。
案内板のようなものは倒されており、屋根に銅板の破片がついていた。どうやらこの案内板に少量使われていた銅板も剥ぎ取って行ったようだ。
「弁慶の割石」という大きな割れた岩が現れた。これが炭治郎が割った石に似ているということで、鬼滅の刃の聖地と言われるようになったようだ。

神社の境内は日本庭園のような荘厳な雰囲気が漂っていた。

足元を見てみると、ラメのようにキラキラと光っている。ここの土壌に含まれる鉱物が光っているのだと思うが、境内全てがこのようにキラキラと光っていて特別な場所のように思える。

肝心な屋根の銅板はこのようになっていた。

比較的剥ぎ取りやすいであろう上の方を集中的に9割ほど取られている。
現在は応急処置としてシートがかけられている。


ここには防犯カメラなどは設置しておらず、山の奥まった場所にあるため人気も全くない場所である。犯人たちは悠々と銅板を盗めたに違いない。
わずか時価60万円相当のために、人はここまで罰ったかりな事が出来るのだろうか。
増加する銅板盗難被害の現状
同市では今年3月にも「女浅間神社」で同様の銅板盗難の被害が発生している。

銅板盗難が急増したのは2023年頃からで栃木県内の銅板盗難の被害が前年の4倍となっていた。
いずれも無人かつ山あいの人気が少ない神社が狙われている。
なぜ銅板が狙われるのか:銅価格の上昇と経済状況
銅板の盗難は今に始まったことではないが、神社の屋根をはがすような被害が急増したのはここ数年の間である。この流れの背景には何があるのか考察してみる。
銅の買取価格の上昇
銅の価格を見てみると、2020年の底から現在の価格は2倍近く上がっている。また、為替レートも加味するとさらに1.4倍の買取価格になっているだろう。

貧困化と盗難の増加
もう一つ考えられる要因としては日本の貧困化である。
現在の日本は、複数の要因が重なり長期的な経済停滞を引き起こしている。まず、少子高齢化と人口減少により労働力不足が深刻化し、消費者層の減少が国内需要の低迷している。さらに、インフレにもかかわらず、賃金が追いついていないため、実質的な購買力が低下し消費が抑制されている。
そのような不景気な状況では盗難が発生しやすくなる。
また、最近増えている若者による売春や強盗はしばしば途上国で起こる問題であり、それが国内で流行り始めているのは日本社会においても構造的な問題が深刻化していることを示している。
全国的に増える金属盗難とその例
神社の銅板に限らず、メガソーラーの導線や建設現場の銅線、エアコン室外機の銅製パイプなどが標的にされている背景には、日本の貧困化と銅価格の高騰が影響していると思われる。銅はリサイクル価値が高く、不正取引も頻繁に行われるため、犯罪者にとっても魅力的なターゲットとなっている。農業用水の金属パイプなど地方の施設でも盗難被害が増加しており、特に警備の薄い場所が狙われやすい傾向がある。
金属盗難を防ぐための対策と今後の展望
高価な金属が使用されている場所や工事現場には、防犯カメラや侵入感知センサーを導入し、犯罪抑止力を高めたり、銅や金属の流通管理を厳格化し、盗難品の転売を防止する法整備が有効である。
金属盗難防止のためには、金属買取業者への取り締まりを強化することも重要である。
違法に入手された金属の売買を防ぐため、業者には厳格な買取ルールの遵守が求められ、買取記録や取引経路のチェックを徹底することで、盗品が市場に出回らないようにする必要がある。また、違法な金属取引には罰則の強化や、地域の買取業者と警察の連携強化も効果的な対策である。