何もしていないのに…コスプレをしていたら銃刀法で検挙された!?
「悪意が無いのに捕まるなんて思ってもみなかった」と話すHさん。
Hさんは群馬県で接骨院を営む60代の男性。Hさんは今から数年前、某県の街道で軽犯罪法により検挙された。
友達とコスプレをして観光してただけなのに
H:古い町並みのある街道を侍のコスプレをして観光をするのが趣味だったんです。あの日は○○宿という所を歩いていました。歩き始めて1時間ほどでしょうか、カブに乗ったお巡りさんに「ちょっといいですか?」と声を掛けられたのが始まりでした。
筆者:職務質問ですね。侍の格好をしていたから目立ったのですかね。
H:一度すれ違ったのですが、腰に差していた模造刀を見てUターンして来たみたいです。
磁石を乗せて鉄だと言ったり、ケース入りの小道具を凶器隠匿と言う
筆者:模造刀と言いますと、刀にそっくりなおもちゃですよね?
H:はい、亜鉛合金製で刃の部分は丸められていて、とても切れるものではありません。しかし、カブのお巡りさんは無線で応援を呼んでしまいました。それから5分後くらいにはパトカー2台、覆面1台、カブ2台で大騒ぎになってしまいました。
筆者:それは大変ですね。近所の人も驚かれたでしょう。
H:警官の一人が、模造刀の上に磁石を乗せて「これはくっつくから鉄だよね?」と言ってきたんです。そして、一緒に歩いていた友達も私が持たせた小道具の木刀を取り上げられ「凶器隠匿携帯罪」と言いがかりを付けられていました。
筆者:木刀を持っていただけで凶器隠匿ですか・・・あれ?亜鉛合金って磁石にくっつかないですよね?
H:それがですね、あの時、磁石にくっついたのではなく、刃を横にして上に磁石を乗せてただけだったんです。署まで連れて行きたいがために、軽犯罪に該当するものであると根拠づけに必死だったのでしょう。
署まで任意同行
H:私も友達も幸い逮捕はされず、半ば強制の任意同行で警察署まで連れていかれました。友達は最初は「凶器隠匿携帯罪」の疑いとして連れていかれたようですが、嫌疑の要件を満たさなかったらしく「参考人」の扱いとなったようです。二人別の取調室でその日の出来事を時系列に聞かれ、4時間後くらいに後日出頭ということで身元引受人の妻が迎えに来てくれて開放されました。友達は私が終わる1時間前には取り調べが終わって帰っていたようです。
筆者:在宅事件の扱いになったんですね。
2週間後、検察から書面で出頭命令
H:2週間後ほどでしょうか。検察の方から書面で連絡があり、出頭の日時が書いてありました。当日、ドキドキしながら検察庁へ出向き、取調室で生年月日や名前を聞かれ、個人の確認が済んだ後、警察に聞かれたのと同じことを聞かれました。
そして、検察はこう言ったんです。「おもちゃの刀を持っていただけですね」
警察では銃刀法に抵触するだのこれは凶器なんだと言われ続けていたのに、一言おもちゃと言われて拍子抜けをしました。
筆者:おもちゃですか・・・人によって解釈が正反対ですね。
不起訴になる
H:確かに条文には模造刀は携帯してはならないと書いてあるそうなのですが、私に悪意が無い事と、法に抵触することを知らなかったこと等を考慮され、不起訴になりました。
筆者:それは良かったです。しかし模造刀でこれほどのトラブルになるなら安易に刀を使ったコスプレは楽しめませんね。お話を聞く限り、警官の対応も過剰でしたね。自分も事件に巻き込まれないように気を付けようと思います。貴重なお話ありがとうございました。
最後に
Hさんのように悪意が無いとしても、法律に抵触すれば警察に犯罪者として扱われ、数時間以上拘束されてしまいます。
これは決して他人事ではありません。例えば、ナイフや刀は明らかに凶器と分かりますが、身近な文房具であるカッターナイフやハサミも凶器の要件を満たしています。
それらを車に載せていたりカバンやポケットに入れていた時に職質を受けた場合、凶器隠匿として事情聴取される可能性があります。
また、日常生活でよく使うマイナスドライバーも携帯を禁止されている指定侵入工具の要件を満たすため、持ち歩いたり車に積まないように気を付けましょう。
知らずのうちに法律を犯すことの無いように普段から気を付けていきたいですね。
クローズアップ実務2 「携帯」違反取締要領〔補訂版〕─銃刀法・軽犯罪法・ピッキング防止法─ 単行本 – 2009/11/1