遊具や芝生無し!ボール遊びすら許可されていない”公園”の謎
皆さんは遊具も緑も何もない「公園」を見た事があるでしょうか?
「公園」と名付けられてはいるものの、遊具もなく、芝生もなく、ただの空き地のように見える不思議な場所です。初めはそこが何のために存在しているのか理解できませんでしたが、さらに調査を進めていくと、この場所には思いもよらない都市計画の一端が隠されていることがわかってきました。
何もない「公園」が点在する工業地帯
それは住宅地などではなく、わたらせ工業団地で見つけた「公園」でした。普段から人通りも少なく、自然と触れ合うには程遠い環境です。普通、公園といえば遊具や芝生、木陰などが備えられ、子供たちが遊んだり家族が集う憩いの場を想像するものです。しかし、この公園には何もありません。砂利が敷き詰められ、フェンスで囲んでいるだけの空間があるだけでした。
その後、他の場所でも同じような「公園」を数か所見つけることになりました。どれもが広さこそあるものの、目的もなくぽつんと存在しているだけ。
遊具もベンチもない、ただの殺風景な敷地。そんな場所がなぜ「公園」として存在しているのでしょうか?その疑問が解き明かされる瞬間が訪れます。
公園の裏に潜む都市計画法
調査を進めてみると、ある情報が目に留まりました。「都市計画法」という、日本の都市開発を規制する法律です。その中には、開発地に対して一定の割合で公園を設ける義務があると明記されていました。
(開発許可の基準を適用するについて必要な技術的細目)
第二十五条 七 開発区域の面積が五ヘクタール以上の開発行為にあつては、国土交通省令で定めるところにより、面積が一箇所三百平方メートル以上であり、かつ、その面積の合計が開発区域の面積の三パーセント以上の公園(予定建築物等の用途が住宅以外のものである場合は、公園、緑地又は広場)が設けられていること。https://laws.e-gov.go.jp/law/344CO0000000158#Mp-Ch_3-Se_1-At_25
具体的には、「土地開発面積の3%以上を公園として確保しなければならない」という規定が存在しているのです。この法律の存在が、この不思議な「公園」の正体を解き明かす鍵になるのではないかと思い至りました。
確かに”公園”の面積は工業団地の3%ある
そこで、実際にこの工業地帯の開発面積を調べ、法的に必要な公園面積を計算してみることにしました。調べたデータをもとに工業団地の総面積の3%を計算してみたところ、まさにあの何もない「公園」の面積とほぼ一致していたのです。
法律の要件を満たすためだけに設置された、名前ばかりの公園。実質的には何の設備も整えられておらず、ただ法律を守るために存在するだけの空間。それが、この工業地帯に点在する「公園」の正体だったのです。
法律を守るためだけに存在する悲しき公園
考えてみれば、これほど虚しいことはありません。本来、都市の公園は人々の生活の質を向上させ、自然と触れ合う機会を提供するために存在するはずです。しかし、ここにある「公園」は形だけの存在。実際には誰も足を踏み入れることもなく、遊ぶ子供も、休む大人もいません。公園がただ「ある」だけで、その本来の役割を果たしていないのです。
都市計画法に従って3%の公園面積を確保するという規則自体には意義があります。問題はその要件を満たすために無理やり作られた「何もない公園」が生まれてしまう点です。もし、形だけではなく実質的に人々が利用できる空間として整備するための基準が存在していれば、これほど殺風景な場所が「公園」として点在することもなかったでしょう。